築地えとビル
photo/concept

テラコッタ製の十二支が壁面を飾る
手前のアートはカリヨンを内蔵


全景


北東コーナー見上(夜景)

高いビルの屋上から見下ろす東京の街はど ちらを向いても一様で画一的な印象を与え るが、個々の地域に着目すると、思いもか けないエピソードや歴史が隠されているこ とに気付く。築地の歴史は江戸城築城のこ ろに始まり、明治期の開港・外国人居留地 の時代を経て今日に至る。ハレの街銀座の 傍らで、今や築地といえばもっぱら実質的 で庶民的なイメージで語られ、ハイカラで 進取の精神に溢れた街という貴重なひと時 代が忘れ去られてしまっている。

本建物は、築地本願寺に程近い見晴らしの 良い交差点に建つ複合ビル(事務所・共同 住宅・店舗)である。古くから築地に住む 共同ビルのオーナーからは、歴史性ある築 地にふさわしく街並みのリーダーとなるも のを、と強く期待された。以上のような背 景から、設計にあたっては、洋風・ハイカ ラといった築地の外国人居留地時代のイメ ージソースを今日的に解釈、再生させるこ とで、埋もれた築地のもう一つの側面に光 をあて、街の活性化に一石を投じることを テーマとした。

全体構成
建物は事務所・店舗からなる事務棟と、共 同住宅・店舗・地下立体駐車場からなる住 宅棟により構成される。各々ほぼ正方形の プランをもつ二つのボリュームは、地下1 階〜2階レベルで連結されているが、外観 ・用途上は独立している。事務所部分はテ ナントビルとしての経済性とフレキシビリ ティを重視し、平面の3/4を事務室と し、残る1/4をコアとしたシンプルな構 成を持つ。住宅・店舗部分は中央区の用途 別容積型地区計画の適用第一号による容積 割増し部分である。

外装計画
築地の土地の記憶や生業を建築に表現する にあたり、外装の決め手の一つになったの がテラコッタである。界隈では、築地本願 寺、旧聖路加病院、旧東劇(大林組設計) などの随所にテラコッタが使われている。 石とミラーで構成される建築のようなハー ドでシャープな外観とは対照的に、ここで は全体にエレガントで優しいファサードを 採用した。1,2階の低層部には築地・明 石町界隈の西洋建築をモチーフに列柱とア ーチをあしらい、石よりも優しいテクスチ ャーのテラコッタを用いたのである。基準 階のカーテンウォールは江戸の祭のシンボ ルである印ばんてんや、古地図に見られる 町割などをモチーフに三本線の入った格子 状パターンとし、トップは未来への発展/ 飛翔をイメージしたアルミフェンスにより 屋外設備スペースを囲っている。柔らかい ベージュのテラコッタ、わずかに赤みを帯 びたステンカラーのアルミカーテンウォー ル、ブロンズペーンの熱線吸収ガラスと、 全体を淡いトーンでまとめ、クラシックに なりすぎないように心がけた。


Photographs by KUDO Photo
Terracotta Art by Satoshi Yabuuchi
karillon Art by Ken-ichi Shimada